2012年11月19日

第3回脳科学将来構想委員会

【脳科学関連学会連合 第3回脳科学将来構想委員会 議事録】

日時

2012年11月19日(月曜日)15:00~16:20

場所

オンライン会議

出席者

(名簿順、敬称略)
委員: 岡部繁男、川人光男、小泉修一、笠井清登、山森哲雄、中込和幸、岡澤均
(尾崎紀夫:機器不調のため不参加)

議事

1.トップダウン型研究 新規プロジェクトの提案について
委員長より、前回の会議後に委員より提出された具体的研究案をまとめたものと、その研究案の骨子を2ページに要約したメモが作成されたことが報告された。この「脳と心の統合バイオマーカーの開発(仮称)」についての新しい資料を基に内容の検討を行った。

以下の意見交換があった。

  • 今後、この新規研究課題提案を外部に対して公表する際には、現在の資料の贅肉を落としてより一般的な研究課題の提案として適切な形式にする必要がある。
  • バイオマーカーの開発というテーマ設定は重要なものであるが、現在の提案書では実際にマーカーを同定するために必要となる技術開発の部分についての具体的な内容が乏しいように感じる。一例として質量分析の技術開発などは書き込んだ方が良いのではないか。
  • バイオマーカー開発という提案の骨子には賛成であるが、「提案内容」の部分の記述により具体性を持たせる必要がある。
  • バイオマーカーの性格付けについて、現在の提案ではあいまいな印象を受ける。実際に疾患のスクリーニングや治療の際の予後の予測に利用できるようなマーカーの開発と、より動物実験で病因の解明に役立つようなマーカーの開発といった区分を明確にして記述してはどうか。
  • 確かにバイオマーカーには病因の解明につながるようなものと、より表面的だが臨床的には利用価値の高いマーカーまで、多様性が存在するので、このWGとしてそれぞれのマーカーの特質をきちんと議論しておく事は有意義である。一方でこれらバイオマーカーが最終的にどのような位置づけになるのかを開発段階で予測することは難しいし、バイオマーカーの開発を通じて基礎と臨床の研究者の双方向性の連携を深めるという意味では最初からバイオマーカーの開発を二つのカテゴリーに分けてしまうとこの研究課題本来の意義が薄れてしまう可能性もある。

以上の議論を経て、今回の文案をさらに整理して学会連合への将来構想委員会からの提案とすることが承認された。



2.日本学術会議次期(22期)マスタープランについて
担委員長より、次期マスタープラン案が提出されたこと及び、経緯についての説明があった。まず研究領域名としては第一候補として「脳科学領域(基礎臨床医学・工学)」、第二候補として「脳科学・精神神経医学」を学術会議の拡大役員会議に提案したが、これらの領域名については大隅・基礎医学委員長より「○○学」という名称は使用しないという事で第二部は統一する意向であるという連絡を受けた。従ってより具体的な研究課題に対応した領域名を再度検討する必要がある。次に企画案の名称としては第一候補として「4Dブレインプロジェクト:生命・医療・情報・社会を4軸とした(多次元)融合脳科学」、第二候補として「脳科学融合研究推進ネットワークの形成」を提案した。具体的な研究計画についてはマスタープランWGにおいて検討中の課題案を本日のオンライン会議で検討したい旨、報告があった。
以上の報告を受けて、委員より以下の意見交換があった。

  • 既に予算化されている大型研究計画として、人文社会科学分野の提案である「心の先端研究のための連携拠点(WISH)構築」と今回の提案の関連性についてはどう考えるべきか。共通の項目も多いと感じる
  • 脳科学関連学会連合として策定する提案としては、基盤は生命科学としての脳科学に置き、臨床医学分野での社会貢献を最も重要な出口とするべきなので、WISHとの切り分けは可能ではないか。
  • WISH提案の主体となっているのは心理学系の研究者であり、研究手法も脳機能画像計測が主体である。第二部からの提案は基礎的なモデル動物の研究等も含んでおり、違いははっきりしている。
  • 本計画が予算化された場合を想定して、どのような枠組みで実体としての研究を展開していくのかについても具体的なアイディアを議論すべきである。基礎研究に関しては計測科学、モデル動物など、自然科学研究機構を中心とした技術・リソース支援のネットワークの形成が一つの可能性だが、臨床研究についてはどのような枠組みが想定できるのか。
  • この計画では基礎研究、臨床研究のどちらにおいても実績のある拠点を強化してネットワークを構造化する体制を考えている。臨床研究では大学病院のリソースを活用して、それぞれの大学の特色を活かした相補的なネットワークを形成することが望ましい。
  • 既に神経変性疾患ではJ-ADNIの枠組みでデータベース化の試みが進展しているので、大学病院や精神・神経医療研究センターを結び付けたネットワークを形成して、多施設縦断的な研究、長期的コホート研究も視野に入れた提案とするのが望ましいのではないか。
  • 臨床分野での研究開発としては、種を越えた疾患モデルの開発、スクリーニングや治療予測に貢献するバイオマーカーの開発、縦断的臨床データの取得といった項目は極めて重要であり、精神・神経医療研究センターの活動の方向性とも合致する。
  • 創薬以外に臨床分野で重要な出口としては、薬以外の治療技術の開発がある。特に脳外科などの領域での医工連携の取組みは取り上げて良いのではないか。

今後のマスタープラン案の作成スケジュールについて
提出締め切りが平成25年3月であることから、平成25年1月中に将来構想委員会としての暫定案のとりまとめを行う必要がある。引き続きマスタープランWGにより作業を継続し、12月中に素案を作成、各委員からの意見の集約を12月後半から1月中旬に行うことが委員長より提案され、承認された。

以 上