第4回脳科学将来構想委員会
【脳科学関連学会連合 第4回脳科学将来構想委員会 議事録】
日時
2012年12月25日(月曜日)15:00~16:30
場所
オンライン会議
出席者
(名簿順、敬称略)
委員: 岡部繁男、川人光男、小泉修一、本田学、高橋良輔、岩坪威、山森哲雄、中込和幸、岡本仁、尾崎紀夫、岡澤均、本間さと
議事
1.トップダウン型研究 新規プロジェクトの提案について
委員長より、前回の会議後に追加された修正についての報告があり、担当委員からも修正部分の内容について説明があった。それらの情報を基に内容の検討を行った。
以下の意見交換があった。
- 脳プロの課題Gと今回の提案の内容について、重複する部分、独自の部分を記載する必要がある。
- 提案自体から「脳」を外してしまい、より一般的なヒトと動物を架橋するバイオマーカーについての研究提案としてはどうか、という意見も外部からいただいたが、本提案が脳関連の学会連合から出されることを考えると、そこまでの一般化は難しいのではないか。
- 脳を外した提案とすることは難しいが、脳科学から外に向かうような融合的研究の方向性を書き加えることは出来る。
- 現在のタイトルは、「研究のための研究開発」となってしまっているので、より短くした「心の階層的な機能指標の研究開発」としてはどうか。
- 脳科学だけではないひろがりを持たせるという意味では、脳の障害が全身に及ぼす影響を含めて、より広い症候についても言及した方が良いし、逆に全身疾患から脳の機能障害が生じる例も多く存在するので、そのような双方向性の関係が明確になるような文章を加えた方が良い。
- 具体的な研究内容の記述に「臨床症状が顕在化する以前の発症前期」という言葉があるが、これは発症前期というより「前駆期」ではないか。
以上の議論を経て、今回の文案のタイトルを「心の階層的な機能指標の研究開発」とし、全身性疾患との関連性についての文言を「背景」「必要性」「具体的な研究内容」の項目に付け加えて将来構想委員会としての最終案とすることが承認された。
2.日本学術会議次期(22期)マスタープランについて
委員長より、次期マスタープラン案の再修正案が提出され、経緯についての説明があった。まず研究領域名としては「脳による心身の機能制御とその破綻」、企画案の名称としては第一候補としての「4Dブレインプロジェクト:生命・医療・情報・社会を4軸とした(多次元)融合脳科学」を含む5案が提示された。また今回の文案は過去の募集の際の項目立てに合わせて体裁を変更したものであること、国外の動向と国際協力に関しては新たな文言が追加されたことが報告された。
以上の報告を受けて、以下の情報提供、意見交換があった。
- 学術会議での検討では各分科会からの研究領域と企画名が出そろった所である。イメージングに関する提案が多いなど、テーマの重複については整理が必要である。公募の進め方についても大枠が決まり、4つの評価項目を基準にして約100課題の大型計画、更に4つの評価項目に加えて「国家としての戦略性、緊急性」の観点を加えて20-30の重点大型研究計画が選定される。
- 神経関連の3分科会(第1部「脳と意識」分科会、第2部「神経科学」分科会、第3部「脳とこころ」分科会)が合同で、9-10月頃にマスタープランと連動したシンポジウムを開催する予定であり、脳科学学会連合の共催として進めたい。学術会議講堂は土曜日は利用が困難なため、東大内の講堂を利用する予定である。このシンポジウムの内容について、将来構想委員会でも検討してもらいたい。
- 第1部では大型研究計画として「心の先端研究のための連携拠点(WISH)構築」が走っている事から、この構想と3分科会でのシンポジウムの関連がどのようになるのか、確認すべきではないか。
- マスタープラン案の中のBlue Brain Projectに関する内容は古くなっており、現在はHuman Brain Projectという名前に変わっている。
- ゲノム関係の国外の動向に関して、imaging geneticsを含む計画が実施されており、気分障害等についても大型の調査が行われているので、記載すべきである。
- マスタープラン案の中の具体的な研究項目について、役割分担をしてより詳しい研究計画の構想を立てるべきである。
3分科会合同のシンポジウムの企画については本委員会もアイディアを出して学術会議分科会との共催とすることが認められた。シンポジウムのテーマは基礎と臨床脳科学の融合を目指すものとし、脳科学の重要性を他の研究分野に対してアピールするものを目指す。
6項目の研究計画について、それぞれの担当委員を決定した。(○印は責任者)
1)階層融合的なデータ取得・解析技術の開発によるシームレス脳科学の実現
○岡部、川人、小泉
2)種を超えた研究を可能とするモデル動物の作成・解析・リソース形成
○岡本、山森、尾崎、笠井、岡澤
3)トランスレータブルバイオマーカーの開発による動物研究とヒト研究の連携
○尾崎、本間、小泉、笠井、岡澤
4)縦断的臨床観察データやバイオサンプルの取得のための拠点ネットワーク形成
○岩坪、中込
5)基礎研究からの創薬シーズの効率的検証のための包括的プラットフォーム形成
○高橋、中込
6)「脳・こころ・社会」を一体化した研究の実現に向けた、異分野連携の推進
○笠井、尾崎
それぞれの項目について、具体的な内容がわかる研究計画案(最終的には各項目数行に圧縮する予定だが、現時点では長めの文案で構わない)を作成し一月中旬までに提出する。1月8日の学術会議の分科会にて提案のフォーマットがわかるので、その内容については担当委員より情報提供をいただく。
続いて委員長より、現在提案されている複数のタイトル案を元にして、タイトルを決定したいとの提言があり、委員により議論が行われた。最終的に
「こころの健康社会を創る多次元ブレインプロジェクト」
をタイトル案とすることとなった。「多次元」は「生命・医療・情報・社会」の4つの次元を融合した脳科学を形成する、という事を意味する。
以上