===========================
脳科連バイマンスリーメールマガジン 2023年7月号(No.19)
http://www.brainscience-union.jp
===========================
日本脳科学関連学会連合会員学会・連携法人会員及び評議員の皆さま
バイマンスリーメールマガジン2023年7月号(No.19)をお届けします。
お手数ですが、貴学会内の会員の皆さまへのメール配信をお願い致します。
❏今号のコンテンツ
・新副代表のご挨拶:岡野 栄之(日本神経化学会理事・前理事長)
・脳科連連携法人本会員のご挨拶文:木村 禎治(エーザイ株式会社)
・第18回リレーエッセイ:柚﨑 通介(日本神経科学学会前理事長)
・JAAS年次大会2023「会いに行ける科学者フェス」開催のお知らせ
・国際神経精神薬理学会2024年世界大会のお知らせ
・活動報告(6月~7月)
・事務局だより
【新副代表のご挨拶】
日本神経化学会 理事・前理事長 岡野栄之
皆様、お世話になっております。岡野栄之と申します。このたび、脳科学関連学会連合の副代表に選任いただきましたことを心より感謝申し上げます。高橋良輔代表を支え、本連合の活動に少しでもお役に立ちたいと考えております。私は、日本神経化学会の理事を務めており、3月までは理事長を務めておりました。同学会は、分子と疾患をキーワードとし、基礎的研究と診療科を問わず神経系の臨床的研究を繋ぐことを60年以上にわたって目指して来ました。この経験を活かし、脳科学関連学会連合においても臨床と基礎をつなぐお手伝いができればと考えております。引き続き、30の参加学会を含む脳科学関連学会連合において皆様と共により一層の成長と発展を果たしていけるよう努めてまいります。
皆様、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
【脳科連連携法人本会員のご挨拶文】
脳科連連携法人本会員エーザイ株式会社 木村 禎治
私はエーザイ(株)の研究開発部門で社外連携を担当しております。脳科連では、産学連携諮問委員会に参画させていただき、脳研究に関する科学的課題に加え、社会的課題、政策的課題について先生方の幅広いご意見を伺え、非常にありがたく思っております。
私自身は30年以上にわたりエーザイで創薬研究に従事しております。特に、ここ25年は脳神経系特にアルツハイマー病(AD)治療薬の研究開発を進めてまいりました。多くの失敗を経験し、もうダメかと何度も心が折れそうになりましたが、7月7日にレカネマブがFDAよりフル承認を得ることができたとき、多くの患者様に貢献できることに感無量の喜びを覚えました。
ちょうどこの日、名古屋で開催されたアミロイド関連学会で発表する機会があり、1990年初頭に「アミロイドカスケード仮説」が提唱されてからの研究の歴史を振り返りました。治療薬創出に30年という年月が掛かったのは、ドネペジル等の症状改善薬とは異なり、大規模で長期の治験が必要になったことも大きな要因の一つですが、この30年でADの基礎研究と臨床研究が一歩一歩進歩を遂げ、それを取り入れながら創薬研究が進んできたことによると考えています。
家族性ADの遺伝子研究はアミロイドβが原因なのか結果なのかを明らかにしただけでなく、遺伝子改変動物を含めた創薬ツールを利用可能にしました。また、イメージングや液性バイオマーカーを組み込んだコホート研究は脳の病態生理を経時的に捕捉可能にし、AD Continuumという概念を生み出しました。これらの成果に基づき、適切な創薬標的の同定、適切な治療対象患者様の選定、適切な用法用量の設定を取り入れた大規模治験を計画・完遂することが出来ました。基礎研究・臨床研究・創薬研究が三位一体となって初めて治療薬を世に出すことが出来ると改めて感じました。
創薬におけるヒューマンバイオロジーの重要性が強調される今、基礎研究―創薬研究-臨床研究と襷を繋いでいく従来型の研究体制では生産性は上がらず、基礎研究・創薬研究・臨床研究が環をなす、つまりフォワードトランスレーションとリバーストランスレーションが循環する創薬体制が不可欠であると考えます。脳科連の産学連携はまさにこの創薬スパイラルを回す触媒になると考えております。
今後も先生方にご指導いただき、微力ながら日本の脳科学研究の発展に貢献できるよう努めてまいります。 よろしくお願いいたします。
【第18回リレーエッセイ】
日本神経科学学会 柚﨑通介
日本神経精神薬理学会(JSNP)の大隅典子先生からバトンを受け取りました。日本神経科学学会(JNS)の柚﨑です。実は2023年6月末でJNS理事長としての任期が終わりましたので今回は一会員として、脳科連への思いも含めて書かせていただきます。
とはいえ、お決まりですのでJNSそのものの説明を簡単にしておきます。詳しくは学会ホームページ(https://www.jnss.org) をご参照ください。JNSは1974年に創立されましたので来年に50周年を祝うことになります。全世界の脳神経科学の関連学会を統合する「学会の学会」という形でInternational Brain Research Organization (IBRO) が1961年に発足し、これに呼応する国内学会としてJNSが誕生したそうです。神経科学の最大の特徴は、そのカバーする学問領域が分子生物学、細胞生物学、生物物理学、解剖学、生理学、生化学、薬理学から、心理学、行動科学、情報学、工学や数学さらには臨床医学まで極めて広範であることは皆さんもご存知の通りです。JNSが目指していることもダイバーシティであり、多彩なバックグラウンドを有する多領域の研究者が集い交流するアカデミックな場の提供です。6月現在でJNSの会員数は約6,100人であり、我が国の脳・神経科学研究者の多くが集う、神経科学に関する代表的な学術団体であると自負しています。
ここまでは表向きのトークですが、会員数36,000人を誇る北米神経科学学会Society forNeuroscienceと比べるとJNSは6分の1に過ぎません。米国と日本の人口比は2.6対1ですので、人口だけでは説明できません。また、JNS会員も基礎系かつ生物・医学研究者が主体です。逆に言うとまだまだ伸び代があるとも言えます。私がJNSの理事長を引き受けて最もやりたかったことの一つは、JNSをより開かれた組織として、国内外の臨床系や心理・工学・計算科学など多領域の研究者がより参加しやすい学会とすることでした。そのための第一段階として、本年4月にJNSは任意団体から一般社団法人となり、新たに選出された100名(いずれ200名に増員予定)の評議員から成る総会からの意見を汲み取る仕組みができました。今回の法人化は、いずれ公益社団法人として、公益のための収益事業を行って財政基盤を確実にして、未来の神経科学者を育てるべく中高生や一般市民に対するアウトリーチ活動を行っていくための布石でもあります。私の理事長としての任期は終わりますが、暫くは(邪魔をしない範囲で)老兵は去らずにJNSの発展を見守りたいと思っています。
脳科連の大きなミッションの一つは、個々の学術団体が省庁とやりとりするのではなく、脳科連が「学会の学会」であるという利点を活かして、より大きな発言力をもつことであろうと思います。私はJNSの宮下会長時代に副庶務理事として脳科連の立ち上げに参画しました。2012年の7月最初の日曜日に第一回の脳科連の評議員会を慶應大学で準備した当時のことを思い出します。でも、もう一つの脳科連の大事なミッションは、脳科連の会員である個々の学会がそれぞれ発展することを促進させることであることを忘れてはいけないと思います。脳科連の会員学会間で会員を取り合うのではなく、それぞれの学会において、学会の壁を越えて参加する研究者が増えるような活動が脳科連として重要だろうと考えています。脳科連の会員学会に所属する研究者の方々が「JNSの大会に行くと楽しい新しい出会いがある」と思ってもらえるような学会としてJNSが発展し、そして脳科連もさらに繁栄していくことを祈念しています。
ところで私が医学部の学生時代に初めて研究発表を行わせていただいたのはJNSの年会でした(当時は日本神経科学協会と呼ばれていました)。多くの研究者の現在の研究テーマも、学部や大学院生時代のものに何らかの形で影響されているように見えます。研究者にも帰巣本能のようなものがあるのかもしれません。脳科連の各会員学会の学生会員や若手会員に対するearlyexposureはとても大切だと思います。
次回のリレーエッセイは日本神経回路学会の銅谷賢治先生にバトンタッチされます。
【JAAS年次大会2023「会いに行ける科学者フェス」開催のお知らせ】
・主催:特定非営利活動法人 日本科学振興協会(JAAS)
・会期:2023年10月7日(土)~13日(金)
・会場:
秋葉原UDX(〒101-0021 東京都千代田区外神田4-14-1)
※10月7日(土)~9日(月祝):ハイブリッド開催
※10月10日(火)~13日(金):オンラインのみ
JAAS年次大会2023「会いに行ける科学者フェス」ホームページ
https://meetings.jaas.science/
【国際神経精神薬理学会2024年世界大会のお知らせ】
・開催日:2024年5月23日~26日
国際神経精神薬理学会2024年世界大会ホームページ
https://cinp2024.org/
【活動報告(6~7月)】
・第33回運営委員会(メール審議6月20日~6月26日)
・第28回評議員会(メール審議6月29日~7月12日)
【事務局だより(主に会員学会事務局向け)】
・「運営費(2023年分)ご送金のお願い」を7月3日付けでお送りしております。
(送金締切り:8月31日(木))
・評議員の変更がございましたら、事務局までご連絡をお願いいたします。
・メールマガジン内容へのご意見やお問い合わせは、貴学会の事務局経由でお願いします。
(代理発送)
日本脳科学関連学会連合事務局
office@brainscience-union.jp
URL:http://www.brainscience-union.jp/
〒113-8657 東京大学農学部内
TEL: 03-5842-2210 / FAX: 03-5842-2237