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脳科連バイマンスリーメールマガジン 2024年11月号(No.27)
http://www.brainscience-union.jp
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日本脳科学関連学会連合会員学会・連携法人会員及び評議員の皆さま
バイマンスリーメールマガジン2024年11月号(No.27)をお届けします。
お手数ですが、貴学会内の会員の皆さまへのメール配信をお願い致します。
❏今号のコンテンツ
・脳科連連携法人本会員のご挨拶文:守口 善也(ルンドベック・ジャパン(株))
・第25回リレーエッセイ:三村 將(日本精神神経学会理事長)
・デジタルブレインワークショップのご報告:
中江 健(自然科学研究機構, 生命創成探究センター, 特任准教授)
・世界脳週間2024名古屋イベントのお知らせ:
吉峰俊樹(脳の世紀推進会議「世界脳週間」担当理事)
・公開オンラインシンポジウム「
研究力再考:次の20年を見据えた『研究力を育む土壌』と共創の道」開催のご案内(NISTEP)
・第9回 (2025年)ジョセフ・アルトマン記念発達神経科学賞の募集開始のお知らせ
(日本神経科学学会)
・活動報告(10月~11月)
・事務局だより
【脳科連連携法人本会員のご挨拶文】
脳科連連携法人本会員 ルンドベック・ジャパン株式会社
守口 善也
ルンドベック・ジャパンの守口善也と申します。脳科連会員学会評議員、事務局並びに会員の先生方には、日ごろより大変にお世話になり、感謝申上げます。この度メールマガジンでのご挨拶申し上げる機会を賜り、大変光栄に存じます。ルンドベックは、1915年に設立され100年を超える歴史がある製薬企業です。北欧デンマークに本社を構え、50か国以上にまたがるグローバル企業ではあるものの、全世界で5600人の社員数と比較的コンパクトなサイズの企業です。1959年に第一世代の抗精神病薬を送り出してからここ70年間は、一貫して神経・精神の領域での薬剤の開発・販売に特化してきたというユニークなプロファイルを持っています。特に抗うつ薬に関しては、時代を代表するような製品を開発してきました。
私自身は、東北大学医学部の学生であったころから脳科学と心に興味を持ち、卒業後は内科・心療内科・精神科での診療経験を積み重ねる中で、国立精神・神経センター(NCNP: 現 国立精神・神経医療研究センター)国府台病院 心療内科レジデント、精神保健研究所心身医学研究部 流動研究員で精神・心身領域での研究・臨床活動をスタートさせました。その後DeptPsychology, Boston College、Martinos Center for Biomedical Imaging、NCNP精神保健研究所 精神生理研究部 室長、群馬大学大学院 医学部 精神科リハビリテーション 教授、等の経歴を経ましたが、一貫したテーマは、精神・心身医学における、情動・感情の認知神経科学・脳画像研究などでありました。2015年よりは、アカデミアから産業界へ移り、ルンドベックジャパンメディカルアフェアーズ部ディレクターとして、精神・神経の薬剤における臨床開発・データ創出や疾患啓発活動などに関わってまいりました。
このようにアカデミアと産業界双方でキャリアを積み重ねた経歴から、2022年に発足した産学連携諮問委員会の委員にご指名いただき、これまで多くの産学連携に関する議論に参加させていただき、見聞を広めることができました。お誘いいただきました池田和隆先生はじめ、関連の先生方に御礼申し上げます。最近では特に、2024年5月に東京で行われたCINP 国際神経精神薬理学会において、産学連携委員会にも参画されている日本の多くの先生方と協力して、産学一体となって大会を盛り上げ成功裏に終わった活動ができたことが何よりもうれしいことでした。
今後も脳科学の発展に、産学連携の観点からどのように貢献できるかを考えてまいりますので、どうぞご指導・ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【第25回リレーエッセイ】
日本精神神経学会理事長 三村將
日本自律神経学会の黒澤 美枝子先生からバトンを受け取りました。日本精神神経学会(以下、本学会)の理事長を拝命しております三村と申します。私自身は昨年3月に慶應義塾大学の精神神経科を退任しまして、現在は同大学の予防医療センターに勤務しており、特に認知症やうつ病、不眠症等の予防を重点的なミッションと考えています。どこの科、学会でも、予防医療はますます重要性が高まっていますが、精神科領域でもさまざまな疾患、病態を未然に防ぐことは最重要課題です。
その中であっと驚くニュースが先日、海外から流れてきました。オーストラリアで16歳未満のこどものSNS使用を全面的に禁止する法案が議会上院で賛成多数で可決されたとのことです。早速、日本でも話題になり、そのような規制に賛成か反対かといった街頭投票の企画も行われていました。だいたい想像がつきますが(あるいはマスコミがそう言わせたかったのかもしれません)、未成年は反対多数、親世代は賛成多数でした。過剰なSNSへののめり込みを抑えることがインターネット依存、行動嗜癖の予防につながることはたしかだと思いますが、この問題をめぐってさまざまな議論があるところでしょう。類似の問題として、統合型リゾート施設(IR)がギャンブル依存症を助長するかといった議論もあります。
本学会はこういった国民の健康、特に心の健康に関わる問題について、広く学際的に議論していくプラットフォームであると考えています。VUCA (Volatility 変動性、Uncertainty 不確実性、Complexity 複雑性、Ambiguity 曖昧性)の時代と言われる今日、精神疾患や障害を含めて、DEI(Diversity 多様性、Equity 公平性、Inclusion 包括性)のあり方が問われています。多様な問題にさまざまな視点で取り組むために、現在、本学会には、学術・教育部門、精神科専門医制度部門、精神保健・医療・福祉部門、法・倫理部門、国際・広報・出版・庶務に関して、65の委員会と8つの班が組織されています。これらの委員会活動を通じて、2023年度には「精神疾患の克服と障害支援にむけた研究推進の提言」「わが国の精神科医療・保健福祉のあるべき姿について」など、8つの提言・見解を発出しています。特に、大きな社会問題となった優生保護法については、「優生保護法に関する声明:優生保護法下における精神科医療及び精神科医の果たした役割に関する研究報告書」の提言を踏まえ、学会としても2024年2月に正式に謝罪をする記者会見を行いました。当時の社会状況を考えると、やむを得なかったとも言えますが、学会として不作為に看過してきたことは事実です。この問題が一区切りした現在、性別不合に関する委員会を中心に、性別不合、性別違和の問題について積極的な議論を続けています。
本学会は当初、日本神経学会という名称で1902年に精神医学の呉秀三と内科学の三浦謹之助の2名が主幹となり、会員数約200名で発会されました。その後、1935年に会の名称に精神を入れ、「日本精神神経学会」と改称しています。本学会のこれまでの道のりは平たんではありませんでしたが、2024年現在、会員数は2万人、専門医は1万2千人、指導医は8千人を超え、巨大組織となっています。活動も多岐にわたっていますが、私は本学会の若返りを図り、次世
代に繋いでいくこと、さまざまな立場の人の意見を取り入れていくことを最優先課題と考えています。学会には3つの機関誌があり、Psychiatry and Clinical Neurosciences (PCN)、PCN Reportsという2つの英文誌と精神神経学雑誌という和文誌の3つの学会機関誌があります。ちなみにPCNとPCN Reportsの表紙は毎号、いわゆるアールブリュットと称される精神障害を持つ人の絵が採用されています。
本学会の多様な活動は日本脳科学関連学会連合の会員の皆様に支えられ、その連携・協調の上に成り立っています。ぜひ本学会としても脳科連の発展に少しでも貢献していきたいと思っておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
【デジタルブレインワークショップのご報告】
自然科学研究機構, 生命創成探究センター, 特任准教授 中江 健
自然科学研究機構・生命創成探究センターの中江健です。今回は2024年9月19日から21日に東京で開催された「1st Digital Brain Workshop」について報告いたします。
このワークショップは、脳科学と数学・計算科学の連携を深め、デジタル脳の構築に向けた新たな取り組みとして、去年開催した「数学と脳科学の連携に向けたワークショップ」の後継として開催しました。また、日本脳科学関連学会連合(脳科連)とマスフォアインダストリープラットフォーム(MfIP)をつなぐ架け橋として、多くの専門家が一堂に会しました。さらに今回は、学術変革領域A「統一理論」にも開催に協力していただきました。短い時間の中、ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。
今回のワークショップでは、口頭発表やポスターセッションを通じて、脳科学と数学の研究者が互いの専門知識を深め合う機会が設けられました。口頭発表後の10分間の質疑応答では、数学・脳科学双方の参加者から多くの質問が飛び交い、活発な議論が展開されました。また、ポスターセッションでは異なる分野の研究者同士の対話が多く見られ、非常に実り多いものとなりました。ワークショップの様子は、Webページに掲載されておりますので、ぜひご覧ください。
https://boatneck-weeder-7b7.notion.site/1st-Digital-Brain-Workshop-131a68936dda4867a88fedd25dfaac92?pvs=4
初日は私の開会の挨拶に続き、銅谷先生による脳神経科学統合プログラム(Brain/MINDS2.0)におけるデジタル脳の構築についての発表が行われました。その後、磯村先生が自由エネルギー原理と神経細胞のモデルを結びつける新しい理論と実験について解説されました。千葉先生が一般化スペクトル理論の応用について発表し、理論的な観点からの新しいアプローチが紹介されました。さらに、RIKENの五十嵐先生が日本のスーパーコンピュータ「富嶽」を活用した脳シミュレーションの最新技術について説明され、Meehan先生が数学のハイパーグラフとその生物学での応用について、田中先生がヒトMRIの大規模データベースとそれを利用した疾患の解析について解説されました。
2日目には小池先生が、筋骨格に基づく運動制御のモデルについて講演し、続いて東京大学の鈴木先生が生成モデルの深層学習の応用について発表されました。午後には、Gutierrez先生がデジタル脳構築に向けて自然言語処理を駆使したデジタルプラットフォームの構築について発表し、NCNPの高橋先生がECoGデータに基づくデジタルツイン脳モデルについて話されました。さらに、廣瀬先生からは因子分析に関する一般的な解説から、新しい正則化法を用いた因子分析とその応用を話されました。また、平先生からはマウスの広域の神経活動と結合に関する興味深い発見について解説していただきました。日をおうごとに議論が深まり、夕方には「デジタル脳の構築と活用方法」についてのグループディスカッションが行われ、グループ内での連携が進むなど異分野との連携がさらに深まったと考えています。
最終日には、三村先生が霊長類の自然行動解析に関する教師なし学習アルゴリズムについて発表し、今回のワークショップのために韓国から来られたMinyoung先生がヒトの母子の脳MRIなどの大規模なデータベースについて紹介していただきました。また、宮廻先生は、細胞配置に関して、トポロジーに基づいた解析方法についての発表を行い、山崎先生が、マウス脳モデルからヒト脳モデルへの拡張の可能性について論じられました。最後の発表として大森先生が神経ダイナミクスの未知パラメータについての推定方法について解説してくださいました。
今回のワークショップの締めくくりとして、1時間30程度の参加者全体で議論を行い、これからデジタル脳を構築や活用していくかについての議論を行いました。企画者としては、時間がもつのかが心配でしたが銅谷先生のデジタル脳に関する分類分けをきっかけに、数学と脳科学の両面からとめどない議論がおこり、特に学生からデジタル脳は国民にどういった価値を提供してくれるのか?という素朴な質問と議論は、今後のデジタル脳と脳科学の発展に向けて意義深いものになったと記憶しています。最後に、田上先生が閉会の挨拶を行いましたが、その後も参加者同士の議論が続き、懇親会へ誘導するのも苦労するほどの盛り上がりでした。
懇親会でも、各分野の専門家が互いの研究に関する意見を交わし、来年度の定期開催に向けた話も持ち上がりました。来年は韓国の研究者との合同での開催も予定しています。来年度以降も引き続き、開催に協力していただけると幸いです。今回のワークショップが、脳科学と数学・計算科学の連携を深め、今後の研究において双方の分野の発展に寄与する一助となることを期待しています。また、私も今回の機会を生かし、MfIP側の協力のもと、数学分野の研究者と連携の可能性を模索しております。今後も、皆様の積極的なご参加とご協力をお待ちしております。
最後に、本ワークショップの開催にあたり、ご協力いただいた脳科連の高橋良輔先生、黒住圭子様、MfIPの田上大助先生、梶原健司先生、学術変革A「統一理論」の銅谷賢治先生、磯村拓哉先生をはじめとする皆様に心より御礼申し上げます。
【世界脳週間2024名古屋イベントのお知らせ】
名古屋市立大学大学院医学研究科脳神経科学研究所認知機能病態学寄附講座 教授 野村 洋
NPO法人脳の世紀推進会議「世界脳週間」 担当理事 吉峰俊樹、副理事長・担当理事 大隅典子、
理事長 水澤英洋
脳の世紀推進会議では名古屋市立大学オープンカレッジとの共催により、「世界脳週間2024名古屋イベント」を開催中です。今回は「脳とこころのサイエンス」をテーマとし、「記憶と学習の脳科学」、「発育期の運動と情動、そしてその障害」、「神経疾患と認知機能障害」、「キズついた脳細胞を再生するためには?」、「認知症の克服に向けて」、「おとなの発達障害」、「新生児行動評価・観察の世界~自閉スペクトラム症の病態解明を視野に入れて~」、ならびに「脳腫瘍研究から見えてくる正常な脳発生のメカニズム」といった8つの講義を用意して、脳がどのようにして作られ、「こころ」をどのように生み出すのか、そして認知症や発達障害とはどのようなものか、など「脳とこころの健康」について理解を深めていただくことを目指しています。すでに一部が11月初めから始まっており、73名の登録者に好評を博しています。詳細は下記サイトをご覧ください。
“2024年 第3期「脳とこころのサイエンス」| 社会貢献活動 | 名古屋市立大学 大学院医学研究科・医学部”
世界脳週間2024 名古屋市立大学 オープンカレッジ – 脳の世紀推進会議
【NISTEP 公開オンラインシンポジウム「研究力再考:次の20年を見据えた『研究力を育む土壌』と共創の道」開催のご案内】
日時:2024年12月20日(金)10:00~15:15
場所:オンライン(Zoomウェビナー)
言語:日本語(オンラインシンポジウムでは多言語機能ツールをご利用いただけます)
主催:文部科学省 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)
事前申込制(参加費:無料)詳細については、以下のリンクより御覧ください。
https://www.nistep.go.jp/archives/59293
【第9回 (2025)ジョセフ・アルトマン記念発達神経科学賞の募集 (日本神経科学学会)】
日本神経科学学会では第9回 (2025年)ジョセフ・アルトマン記念発達神経科学賞の募集を11月
1日より開始いたしました。
募集詳細は下記Webページをご参照ください。
https://www.jnss.org/joseph-altman-award
募集期間:2024年11月1日~2025年1月31日
【活動報告(10月~11月)】
・第7期副代表選出公示・推薦・決定(10月3日~11月5日)
・第7期運営委員選挙(11月25日~12月5日)
・第38回運営委員会(メール審議11月27日~12月2日)
【事務局だより(主に会員学会事務局向け)】
・評議員の変更がございましたら、事務局までご連絡をお願いいたします。
・メールマガジン内容へのご意見やお問い合わせは、貴学会の事務局経由でお願いします。
(代理発送)
日本脳科学関連学会連合事務局
office@brainscience-union.jp