第1回目 ストレスと脳〜さあ、ストレスチェック〜
“ストレス”って何でしょう。
もともとは物理学で用いられる“応力(歪みを元にもどそうとする力)”を意味します。私たちの体は刺激(ストレッサー)によって生じた歪み(ストレス状態)を元にもどそう(ストレス反応)とします。今ではストレッサーもストレス状態もストレス反応も“ストレス”という一言で表現されるようになりました。
生理学で“ストレス”という言葉を初めて用いたのは、ストレス学説の提唱者として有名なハンス・セリエ博士(1907-1982)です。ハンス・セリエ博士は、1936年ネーチャー誌に有名な論文を発表します。ストレス学説の最初の論文ですが、文中にストレスという言葉は使わず、非特異的有害要因によって引き起こされる全身適応症候群と表現しました。
医学で使われるストレス反応は、心拍数や血圧の変化のような自律神経系を介した反応、副腎皮質ホルモンやアドレナリン分泌のような内分泌系を介した反応、不安などの感情の変化、そして行動の変容などを含みます。これらの反応は、いずれも脳を介した生体反応です。
ストレスとうまくつき合うには、ストレッサーに対して脳をうまく使って認知・感情・行動を変えて(ストレス・コーピング)、上手に対処することが重要です。
現代はストレス社会です。私たちは家庭、学校、職場などで多様なストレスにさらされています。「5分でできる職場のセルフストレスチェック」をやってみて、こころのストレス度をチェックしてみましょう。きっとよい対処法が見つかると思います。
文責:上田陽一
所属学会:日本神経内分泌学会、日本生理学会・他
所属機関:産業医科大学医学部第1生理学